食物アレルギー事故防止に関する研究と食物アレルゲン定量法開発 (平成30年度日本食品衛生学会奨励賞）

摘要

現在，食物ァレルギ一疾患の患者数の増加や多様化は，大きな社会問題として捉えられている.そのため，わが国では，2001年にアレルギー物質を含む食品に関する表示制度を開始し，2008年には学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン等の指針が整備された.これらは食物アレルギー対策として高い施策効果を示してきたが，一方，その後も保育所や小学校の給食等において誤食による食物アレルギー発症事故が発生してきた.特に，2012年12月に東京都調布市の小学校給食で発生した食物ァレルギーによる死亡事故例は，社会的に大きく注目され，事故防止の対策や取り組みを強く促進させた.事故防止のためには，過去の事故原因を検証し今後の対策に反映させることだけでなく ，その下支えとなる食物アレルゲン分析法の開発も必要である.そうした背景から，演者らは食物ァ レルギ一発症防止に資する以下の研究を行ってきた.