CDCミニチュアライトトラップと人囮法とによるヒトスジシマカ生息密度の評価

摘要

ヒトスジシマカ(Aedes albopictus Skuse,1895)(図1)は東南アジア由来の蚊と言われており、いつの時代か明らかでないが、100年以上前に、日本を含む極東に分布域を広げたと考えられている(Hawley,1989).1980年代からヒトスジシマカの世界的な分布域が拡大し、北米、中南米、アフリカ大陸の一部、豪州、イタリア、フランス、ギリシャを含むヨーロッパ各国に定着が確認された(Sprenger et al.,1986;Pozza et al.,1994;Romi.,1995;Laird et al.,1997;Jupp&Kemp 1992;Paupy et al.,2009;Knudsen et al.,1996;Succo et al.,2016).他種ヤブカの分布域拡大と同様に、ヒトスジシマカは主に古タイヤの輸出入によって世界的に分布域を拡大した(Hawley,1989;Reiter,1998;栗原、2003)。日本における本蚊の分布域は、1990年代に東北地方に急速に拡大し(Kurihara et al.,1997;Kobayashi et al.,2002),2016年には、青森巿內で確認された(未発表)。日本においてはヒトスジシマカが媒介したと考えられたデング熱の流行は、1942-44年にかけて西日本の軍港を中心として20万人規模で起こった(Hotta,1998)。その他、ヒトスジシマカが関わったデング熱の流行は、2000-2001年および2016年の米国ハワイ州における数百人規模の流行(Effler et al,2005;Johnston et al.,2016)、2014年の中国広州市における4万人規模の流行(Yiguan et al.,2016)、2014年の東京における約162人の流行(Kutsuna et al.,2014;Kobayashi et al.,2014)などが挙げられる。その他、台湾、フランス、イタリア、クロアチアなどで、数人から十人規模の流行が散見されている(Teng et al.,2007;Ruche et al.,2010;Schmidt-Chanasit et al.,2010)。