建築の産業化がもたらしたもの

摘要

時代を刻印するような建築作品が、その時代に多く建てられた建物種類(ビルディングタイプ）から生まれる確率は高い。第二次大戦後の日本で言えば、まずは圧倒的な住宅不足を背景に「最小限住宅」がつくられ、新しい民主的な社会を象徴する「市庁舎」がつくられ、高度経済成長により余裕ができると、強い作品性を持った「戸建て住宅」や「公共文化施設」がつくられた。経済成長を支えた貿易黒字を縮小して内需を拡大せよというかけ声のもと、不動産投資が活発になると「オフィス」「マンション」がっくられ、消費の拡大に伴い多様な「商業施設」がつくられ、多くの選択肢がぁることが人々にとって当たり前になるころには、大量供給や規格化のために画ー的になりがちだった「集合住宅」や「学校建築」の、個性豊かな空間へのつくり替えが進んだ。