ダイビル本館•中之島 四季の丘

摘要

質実なデザィンの中にも要所に多様な装飾を施したネオロマネスク様式で人々に長く親しまれてきた旧ダイビル本館(1925年竣工)を最新鋭のオフィスビルに建て替えるにあたり,旧ビルの意匠を現代のクラフトマンシップで最大限継承し,町並に歴史の厚みを与えることを目指した。意匠継承にあたっては,90年の歴史を刻む旧建物素材の入念な調査・性能試験等により再利用の可能性を十分に検証した上で,15万個のれんがや石柱等をひとつひとつ丁寧に取り外し,新しい躯体の上に再取付けを行い,時と共に深みを増した強い質感を再現した。また,床タイル•金物等の,再利用•型取りによる装飾の再現など,丹念な手仕事で玄関ホール等の華やかな意匠も復元した。その重厚な復元空間に対して,新しく付加した高層オフィスエリアでは,新旧の場面の転換•対比を意識し,日射遮蔽効果のある石材方立付サッシやガラスEVシャフト等により,専有部•共用部にも自然光が溢れ,眺望が広がる開放的な空間とした。90年前の手仕事による力強い石材レリーフで彩られた足下周りには十分なオープンスペースを確保したことで,テラスを持つ店舗が通りに顔を出し,街に新たな活気と賑わいを生んでいる。