かなや幼稚園

摘要

福島県では2011年3月の原発事故以降,子供たちの屋外活動がしづらい環境が長く続いた。現在では様々な放射線量に関するデータも公表され,少しずつ震災前と同じ生活を取り戻している。当園では当時の情報量が少ない中,小さな子供をもつ保護者が安心して預けられ,子供たちがたくさん「汗をかける幼稚園」をつくることを目指した。園舎は3つのゾーンで構成した。中央の室内遊戯場は膜屋根を透過した柔かな自然光が降り注ぐ開放的な半屋外空間とし,2階の回廊や様々な遊具を挿入することで「汗をかける幼稚圍」を実現した。一方それを挟む保育室や管理室等はルーバー状の梁を現して落ち着いた雰囲気とした。膜屋根の形態を寄棟にした理由は膜の特徴である透過性を重視した結果である。意匠的にも優れ,ブレースなど膜面の透過性を阻害する部材がなくても成立する形態を模索した結果,寄棟が導き出された。さらに膜の継ぎ目を登梁にあわせることで,膜の透過性と木の暖かみを併せ持つすっきりとした膜屋根となった。冷暖房は子供の生活領域が低いことから,床吹出し空調を採用した。またデシカント式調湿換気装置により湿度環境を整え,夏の冷え過ぎや冬の乾燥が起こらないようにした。