西麻布の集合住宅

摘要

単身者向け賃貸住戸とオーナー住戸からなる計11戸の集合住宅。敷地は古くからの木造家屋群と,近年開発された高層マンションの間に位置する。単身者の生活は通常,鉄扉によって周囲の街との関係を断ち切られるが,ここではそれらの新たな集合形式と,街への立ち現れ方を考察した。共用部と占有部という2つの領域をつなぐため,全住戸の玄関先にメッシュスクリーンで囲われたプライべートテラス(以下P.T.)を持たせた。これにより共用部に対して住戸の玄関を開放的につくることが可能となり,2方向からの採光と通風を確保した。建物の中央に大きな空隙として設けた共用部は,周囲の街に対する光と風の通り道でもある。この空隙に面して立体的にP.T.を配置した。P.T.は高密度に集合した住戸相互間に適切な距離感をつくり出す装置であると同時に,自転車や植栽など住人の生活要素があらわれる屋外の居室でもある。それらの立体的な積層がポーラスな風景として街に浮かび上がる。共用部から住戸の隅々までを連続したひとつながりの環境としてつくり,狭小な居住空間を拡張するとともに,住戸と街の接続の仕方をよりなめらかに変えていく試みである。