オフィス空間の三つの行方

摘要

われわれの生活に観念的な優位性を保って影響する20 世紀の重要なパラダイムのひとつに、職住分離の二極構造 による世界観があります。この家と働く場を分ける構造は、 その文脈に基づいてつくられたわれわれの環境、都市やほと んどの建築の構成の原理に深く根ざします。この構造に 沿って20世紀が描いた未来像は、1960年代のアニメ『宇 宙家族ジェットソン』のような機械化による余暇中心の生活 として構想されていました。しかし、20世紀後半になるとこう した住環境のみを描いた未来像は姿を消し、労働と余暇が 混ざり合い、職住が影響を与え合うものに変容し始めます。 ホームオフィスやテレコミユーティングなどといった姿を借り ながら、余暇の時間が労働形態へ、また逆にクリエィティプォ フィスなどに見られるように、労働の時間が余暇の形態へと 転換され、住環境と労働環境が再結合しだすのです。この 変化は、われわれの都市や建築のあり方を再び大きく変えて し、くと考えられます。とすると労働の場であるオフィスは、20 世紀の二極構造である労働と余暇が混じり合い遍在する構造にシフトし始めた状況の最前線に立っていると言えます。 本稿ではこの状況を受け、オフィスデザインの新たなモデル 構築の手がかりとなる三つの興味深い方向性について簡単 に記します。