聴力低下を伴う高齢者のための住宅用火災警報器音伝達システムの開発

摘要

日本の住宅火災による死者数は65歳以上の高齢者で69.9%を占め，死者発生数は加齢とともに著しく増加する傾向にある（消防庁，2017）．また，死に至った経過の発生状況は逃げ遅れで49.7%を占め，午前2時から6時までの時間帯で多くの死者が発生している（消防庁，2017）．したがって，火災発生時において就寝による逃げ遅れを防ぐ対策は重要である．一般に，40歳を過ぎると聴力低下が高音域から徐々に始まり，50歳代では3000Hz以上の周波数に顕著に低下が現れ，さらなる加齢により低音域の聴力低下も進行するとされている（Parsons，2008）．また，消防法により設置が義務付けられている火災警報器について，現有機器の警告・報知音の周波数は2000～3000Hzが最も多く，聴力低下のない人を対象とした設計である（Shibano, et al., 2002）．そのため，火災警報器の警報音は，聴力低下を伴う高齢者に伝達されない可能性が危惧される．実際に，5 つの高齢ケアセンターで実施した被験者実験では 66-88 歳の年齢層は 22-48 歳の年齢層に比して火災警報音で目覚めない傾向が見られた（Wong and Leung, 2005）．