切り返し動作におけるACL負荷に対する筋張力の動力学的な貢献

摘要

スポーツ外傷の中で，膝関節は足関節に次いで2番目に多く(Ingram, et al., 2008)，その中でも特に，3週間以上のスポーツ離脱や手術を要するような重篤なスポーツ外傷では，膝関節での発症が最も多いと報告されている(Darrow, et al., 2009).スポーツ外傷の中で膝前十字靭帯（ACL：AnteriorCruciate Ligament）損傷は最も重篤で，発症頻度が高い外傷である(Majewski, et al., 2006)ため，予防方法の確立が求められている．しかし，ACL損傷予防方法は確立されておらず，1990年から2010年にかけて女性のACL損傷割合は減少していない(Sanders, et al., 2016)．この原因として，既存のACL損傷予防プログラムは一回当たりの介入時間が長く(Myer, et al., 2006)，継続することが困難であることが考えられる．このため，スポーツ現場に普及し得る ACL 損傷予防プログラムでは，簡便性が高く継続することが容易なプログラムであることが理想的となる．そこで，簡便性が高くACL特異的な予防方法を確立するために，動作中の ACL 負荷の生成メカニズムを明らかにすることが必要であると考えられる．