数値解析による柱状構造層を有する耐環境性セラミツクスコ一ティングのき裂発生条件の予測：クリーブの影響

摘要

航空機エンジンの新しい高圧タービン部材として，従来材のニッケル基系超合金に比べ軽量であり耐熱性に優れた炭化ケィ素（SiC)繊維で強化したSiCマトリックス複合材料（SiC/SiC)が注目されている.部材が曝され る高温水蒸気環境下でのSiC/SiCの劣化を防ぐために，SiC/SiC上に耐環境性セラミックスコーティング (Environmental barrier coating ； EBC)が施される.EBCは各層が異なる機能を持つ多相積層構造を有している. 本研究で対象とするEBCは，図1に示すように，熱衝撃緩和のためのィッテルビウムモノシリケート（Yb_2SiO_5 ； YbMS)柱状構造層，蒸気遮蔽のためのYbMSとイッテルビウムダイシリケート（Yb_2Si_2O_7 ； YbDS)の傾斜層， 酸素遮蔽のためのムライト層（Al_6Si_2O_(13) ； mullite),結合層としてのサイアロン（SiAlON)層およびSiC層から構 成されている.これらの層は高温で成膜され，その後室温まで冷却される.このとき，EBCは，多相積層構造に 起因した複雑な力学状態となる.また，冷却速度が20℃/分であるため，製作時の冷却プロセスにおいてタリー プが生じ，力学状態に影響を及ぼすと考えられる.7令却過程での複雑な力学状態におけるEBCの機械的信頼性を 確保するための構造設計指針を理論から与えるために，本研究では，柱状構造層を含むEBCモデルに対して，ク リープを考慮した有限要素法解析（Finite element method ； FEM)解析を実施し，EBC製作時の冷却過程で生じる クリープを考慮した熱応力により生じる界面き裂のエネルギー解放率（Eneigy release rate；ERR)を取得する.さ らに，EBCモデルのmullite層,SiAlON層およびSiC層の膜厚を変化させ，クリープを考慮したERRに及ぼす コーティング層の厚さの影響について検討する.