複数のマイクロホンを用いた独立成分分析による車内音寄与分離手法について: 実車走行時の車内ロードノイズ，ウィンドノイズ寄与分離への適用例

摘要

自動車車内の快適性向上には，車内騒音の改善は必須である.その一方で，燃費や車両運動性能と車内騒音性能を両立するためには，騒音低減の為の質量増加や形状変更は必要最低限に留める必要がある.このような観点から無駄な質量増加の無い，効率の良い騒音対策を行なうには，走行中の車内騒音に占めるエンジン音やロードノイズ，ウィンドノイズの割合（寄与）を正確に把握し，寄与が高い音源に集中的に対策を施すことが肝要となる.車内音に対する各音源の寄与を把握する技術として，伝達経路解析(Transfer path analysis: TPA)が開発され，現在までに様々な手法が提案されてきた.しかしながら明確に音源の場所が把握でき，音源信号が容易に測定できる場合にはTPAを用いた手法は寄与分離に有効な手段となる一方で，ウィンドノイズのような音源部位の特定が困難な場合には，音源信号やリファレンス信号の取得ができないため，これらの手法の適用も困難になる.また，入力点信号を測定するために，加速度センサやマイクロホンを用いる必要があるものの，設置スペースの制限や測定器の耐熱性などの環境によって設置困難な場合やセンサ設置によって音源の特性が変化する場合も同様に，これらの手法の適用が困難になる.このように音源信号が測定困難な場合にも，効果的に車内音対策を実施するためには，新たな方法を考案し，車内音に大きな寄与を持つ音源を的確に把握する必要がある.そこで我々は音源信号（リファレンス信号）を測定せずに簡易に短時間で，複数の箇所で計測される車内音のみを用いて寄与分離を行なう手法として，自動車の振動解析等にも適用事例のある独立成分分析(Independent component analysis: ICA)に着目し，これまでに基礎検討を進めてきた.