AI を活用した内視鏡検査、および、外科手術の将来展望

摘要

昨今、本邦におけるがんの罹患数は人口の高齢化を主な要因として増加傾向にあり、これに伴い国民医療費は上昇を続け、2015 年には約42 兆円が費やされている1)。そこで、従来の「出来高払い方式」の医療から、一定の医療コストに対するベネフィット（有効性や安全性）の大きさを償還指標とするValue-Based Healthcare の概念に基づき、医療費の｢成果に基づく支払い｣への転換が求められている。たとえば、内視鏡検査により病変を早期発見し、低侵襲な治療戦略を選択すること、更に、手術に伴う合併症の低減や再手術を回避することで病院の費用負担を抑制し、入院日数を短縮できれば、患者や医療提供者にとっての価値に基づく効率的な医療サービスの実現が期待できる。オリンパス（以下、当社）ではICT やAI 技術を活用することで、医療の質のみならず、医療の効率やコストを改善することでケアサイクル全体の最適化を目指した各種取り組みを推進している。本稿では、消化器内視鏡分野、および、外科手術分野においてAI を活用した具体的な取り組み事例について概説する。