DNS による低レイノルズ·回転数域における回転平行平板ポアズイユ乱流の乱流構造

摘要

回転系の剪断乱流の解明は，ターボ機械等の回転機械における内部流れや，自転影響下での大気や海洋の流れ等，多くの工学·自然現象に関わるため，これまで多くの研究がなされてきた．回転剪断流は体積力であるコリオリ力が流体に影響を及ぼす典型的な例であり，このコリオリ効果は流れの安定性や乱流遷移に重要な影響を及ぼす．スパン方向軸に対して剛体回転を伴う平行平板間ポアズイユ流は，コリオリ効果により平均速度勾配の正負に基づき圧力側（pressure side，unstable side）と負圧側（suction side，stable side）とに分別され，異なる乱流状態が混在することが知られている．平均剪断による渦度と回転方向が同じ方向となる負圧側では乱流が安定化し，時には再層流化する．また，反対方向となる圧力側では不安定化し，規則的にスパン方向に並hだ縦渦構造であるロールセル（roll cell: RC）を発達させる．近年の研究において大規模な直接数値シミュレーション（DNS）を実施することにより乱流から層流への遷移過程において大規模な間欠構造が現れることが示されている．これは乱流域と準層流域とが主流方向に対して傾いて交互に現れる縞状の構造で，乱流縞（turbulent stripe: TS）と呼hでいる．これまでの研究により，平行平板間流において，ポアズイユ流·クエット流·回転クエット流中での安定化方向において，TS の発生が確認されている．しかし，本研究対象である回転ポアズイユ流に関しては，圧力側で発生するRC がチャネル全体に渡って支配的となることで，TS は発生しないと報告されている．本研究では，低レイノルズ数域Re_τu_δ/v= 54–80（u_τ：摩擦速度，δ：チャネル半幅，v:動粘性係数），低回転数域Ro_τ=2Ωδ/u_τ= 0.0–1.5（Ω：回転角速度）におけるスパン方向軸回転下の平行平板間ポアズイユ流に焦点を当て，乱流‐層流及び静止系‐回転系の流れの二つの遷移過程を定性的に追い，各種統計量との関連性を考察することにより定量的評価も行う．特に， TS 発生の有無，RC 発達過程に関して検討する．