空中収束超音波による振動触覚提示のための触感記録装置

摘要

触覚研究における近年の研究の動向として注目すべき点として、振動触覚による臨場感を伴った触覚体験の提示が挙げられる。ここで述べる振動触覚とは単純な正弦波や矩形波による皮膚表面の振動ではなく、適切な方法で生成されたより複雑な時間波形のことを指す。これらの時間波形は現実世界における振動から抽出されているものが主である。把持した棒を傾けた際に棒の中をころがる物体を触覚的に把握することができるものや、ペン型のデバイスで等方的なテクスチャをなぞる感覚を再現できるものなどが代表的な研究の例である。これらの研究に共通する特徴は、現実世界から抽出した振動触覚によってリアリティのある感覚をユーザが把持したデバイス越しに提示することに成功している点にある。このユーザが把持したデバイス越しに触覚を提示するという状況はユーザの動作に応じた触覚フィードバックがユーザに与えられるという、いわば「能動的触覚」の提示との親和性が高い。一方で触覚には対象に触れられるという受動的な側面があり、たとえば他のユーザと触覚でコミュニケーションをとることを目的とするシステムを考える場合、この受動性は本質的な要素である。