声帯振動に着目したオペラ歌唱と合唱歌唱の比較研究

摘要

本研究では, プロのバリトン歌手1 名を対象にオペラ歌唱と合唱歌唱を比較することで両歌唱法の特性を調査した。実験結果より, 合唱歌唱はオペラ歌唱に比べSPL が小さく, Oq が大きなる傾向にあることが認められた。 合唱歌唱では,オペラ歌唱に比べ,より弱く弛緩した声で歌唱する傾向にあるといえる。さらに, 合唱歌唱ではSPLやOqを大きく変化させることなく歌唱していることが認められた。これは, 音高, 音量に依存せず，それぞれの歌唱方法において，一定の声質を保って，歌唱している可能性を示唆している。両歌唱のOq の差が顕著に現れるのは音高が230―260 Hz のあたりであった。しかしながら，この傾向が他の曲, フレーズにおいても成り立ち，曲に関係なく一般化できるかどうかについては，さらなる検証が必要である。本研究では被験者が1 名のため, 得られた結果が個人特性の域を脱しない。今後は被験者を増やしての実験が課題となる。