ISASにおけるシステム工学の実践と教育（その光と影）

摘要

宇宙科学を取り巻く環境の変化は厳しい．限られたリソースの中で，如何に世界と肩を並べて戦っていくか，あるいは世界にとって信頼できるパートナーとなっていくか．その答えは単純で，これまで成果を挙げてきたように，世界が驚くような挑戦的なミッションをタイムリーに実行していくしかない．これは思想と実行の問題であり，システムズエンジニアリングの力を磨き高めていくことが不可欠である．本稿では，システム工学に関わる教育とその養成の舞台となる研究の実践について，宇宙科学研究所を例として，これまでの成果（光）と現在の課題（影）という形で考察を行い，この分野の今後の発展の方向性を左右する課題を識別した．その中でも大学共同利用システムとしての宇宙研の役割の明確化とその前提となる大学コミュニティの意識改革が最重要の課題である．その根底にあるものは，大学側で総合工学としての宇宙工学研究がまだ成熟していないという危機感もある．宇宙科学にとって，システムズエンジニアリングという切り口は，すなわちミッションの創出と実行という至上の命題と同義である．このような状況の中で，宇宙研と大学コミュニティに今後何を期待していくべきか．この視点でパネルの議論を活性化したい．