水棲生物の膜ヒレが推進力に与える影響に関する数値解析

摘要

近年，人間では探索することが難しい過酷な水中環境下での調 査の有効な手段として，広範囲で探索可能な自律型水中ロボット （AUV）の開発が進められている．将来的には海洋資源の探 索や生物の生態調査，水害発生時の支援活動など様々な活躍が期 待される．現在開発されているAUV の推進機構は船舶等に用 いるスクリュープロペラ機構が一般的であり，性能や信頼面で豊 富な実績を誇っているが，未だ目標とする運動性能に達していな い．この課題を解決するために水棲生物の推進機構が特に注目 されている．水棲生物の推進機構は生息する環境に適応するため に長年の進化を経て様々な側面で高い運動能力を持つ．この 水棲生物の推進機構をAUV に取り入れることでその運動性能を 向上させることが期待されている.現在まで，これらの水棲生 物の推進機構を模擬した魚型ロボットの研究や開発が行われてき た．しかし，これらの魚型ロボットの推進速度や推進効率は， 生きた魚に比べて非常に低い．一般的な魚は1 秒間に全長の2～3 倍の距離を進むのに対して，現在の魚型ロボットでは1 秒間に全 長と同程度進めば高速とされている．その理由の一つとして， 水棲生物の推進メカニズムは複雑かつ繊細であり，生体実験が困 難なため未解明な部分が多くあることが考えられる．