再突入カプセル熱空力設計及びリエントリ安全評価におけるCFD 解析の研究課題

摘要

宇宙開発はこの50 年のあいだに科学や工学の両面において飛躍的な発展を遂げてきた．通信?測位?地球観測，宇宙科学探査，国際協力による宇宙ステーションや月?火星宇宙探査，宇宙旅行など宇宙利用形態も多様化しており，近年の参画者の裾野の広がりは目覚しい．日本においても宇宙輸送ロケット，探査機やカーゴ輸送宇宙船，地球への帰還回収カプセルなどの宇宙開発を支える基礎技術を着実に獲得してきた．またロケットや宇宙機などの大規模システム開発を支えるエンジニアリング技術としても高信頼性開発手法，様々な不確かさや物理現象を扱える設計評価法を確立してきた．こうしたエンジニアリングの技術革新は数値シミュレーション手法の進化により実現されたものであり，様々な設計対象の広い環境条件下における物理現象の詳細データを効率的に得ることが鍵である．本研究では，宇宙航空研究開発機構JAXA を中心とし活発な研究活動を展開している大気圏リエントリに対する数値流体シミュレーション（CFD）技術の適用にスコープしている．まずは，HTV搭載小型回収カプセルなどの熱空力設計やロケット上段などのリエントリ安全評価へのCFD 解析の適用状況を著者らの既報告論文を元に述べる．JAXA では，有人宇宙開発における国際宇宙ステーションからの物資回収技術であるHTV 搭載小型回収カプセル（HSRC），宇宙科学研究における火星衛星探査（MMX）や国際共同彗星サンプルリターンミッション（CAESAR）に向けたサンプルリターンカプセル 開発といったプロジェクトが進行中である．本論文では，こうした今後の挑戦的な宇宙開発を実現させるためにはCFD 解析手法をどのように進化させるべきかを共有させて頂きたい．