培養神経細胞に対するガンマ波領域の機械的振動の影響

摘要

脳は外部からは光や磁場，内部では化学刺激や力学刺激に晒されている．これらの刺激は，脳を構成している神経細胞に影響を与える．神経細胞は軸索を伸ばすことで知られていて，脳内の情報伝達はこれらによって行われる．情報伝達は，軸索を活動電位が伝導する方法とシナプス結合という神経伝達物質を用いた方法の2 つを組み合わせて行われるが，このうち活動電位は脳波として測定できるため，脳の活動を研究するために用いられてきた．脳波はその周波数によって区分けされており，一般に 13 Hz 以下は睡眠時や安静時，14～25 Hz は覚醒時に測定される．26～80 Hz の周波数はガンマ波領域と呼ばれ，神経間の活動を調整していると考えられている．近年，ガンマ波と外部や内部からの物理刺激との関連性についての研究が盛hに行われている．その研究例として，神経細胞に対する光の影響では，60 W，40 Hz の白色光下でラットを飼育すると，神経細胞の遺伝子の一部が改変され，アルツハイマー病の原因物質のアミロイドベータが減少し，磁場の影響では，8～30 μT，50 Hz の磁束密度により，神経突起伸長が抑制された報告がある(2)．これらにより，ガンマ波領域の刺激により神経細胞に影響が現れると考えられる．同じように神経幹細胞に対する機械的振動の影響では，0.5 G，25 Hz の機械的な振動により，神経幹細胞の神経細胞への分化?増殖が促進された報告がある．これらを考慮し，神経細胞に対するガンマ波領域の機械的振動の影響があると考えられる．本研究を通して，未だに解明されてないことの多い神経細胞に対しての新たな知見を得ることができ，振動を発生する枕を用いた治療機器などの医療分野に貢献できるのではないかと考えている．本研究では，軸索伸長の速度や伸長方向の制御の研究で用いられている神経細胞様細胞であるラット副腎髄質由来親クロム性細胞腫PC-12（以下PC-12）を用いた細胞培養実験により，神経突起伸長に対する機械的振動の影響を検証することを目的とする．