対称2枚貼り折紙法を用いた薄肉管の衝撃吸収特性評価

摘要

近年，折紙工学を様々な産業に取り入れる動きが盛hである．本研究では，自動車前方に取り付けられる筒状の衝撃吸収材であるサイドメンバーに着目し，折り紙構造が持つ構造強化特性や伸縮?展開特性を活かしたサイドメンバーモデルの設計を検討する．サイドメンバーに求められる主な特性としては，歩行者との衝突時の歩行者保護の観点において，衝突初期にかかる荷重のピーク値や圧潰中の平均荷重を抑えながら，全体のエネルギー吸収量を高める特性が求められる．また，サイドメンバーは車体内部に組み込まれるため，他の部品との関係から設置スペースが限られている．そのため，初期ピーク荷重を抑えるとともに，構造全体が折れ曲がることなく圧潰することでクラッシュゾーンを大きく確保し，エネルギー吸収量を高める構造が期待される．現行のサイドメンバーは，矩形断面を持ち，長手方向には真直であるような中空の筒状構造が基本的である．この形状は，圧潰中に構造全体が座屈した場合には反力が大きく下がり，吸収エネルギー量が大幅に減少してしまう．その他にも，衝突初期のピーク荷重が非常に大きく，人体に与える損傷が甚大であるなど改善の余地が多数存在しているが，製造の容易さとコスト面などの理由で現在の形状が採用されている．先行研究では，野島の反転螺旋折紙構造をサイドメンバーに適用したモデルが考案され，現行の矩形断面部材よりも初期ピーク荷重を抑えながら，エネルギー吸収量が多いモデルの作成に成功している．また，野島の2 枚貼り折紙構造や舘?三浦の多面体構造をサイドメンバーに適用したモデルも考案されており，初期ピーク荷重を抑えながら，現行モデルと同程度のエネルギー吸収量を持つことが明らかとなった．しかし，これらのモデルは立体形状の複雑さから，現行のモデルと比較して加工?製造にコストがかかる問題を抱えており，実用化には至っていない．そこで，本研究では，実際に加工?製造する上でのコストを考慮し，現行モデルと同様にプレス加工と溶接によって製造が可能でありながら，現行モデルよりも優位な特性を持つサイドメンバーモデルを設計することを目的とする．今回は，多数存在する折紙パターンの中でも，立体の成型が容易な対称2 枚貼り折紙法を用いてサイドメンバーモデルを設計する．そして，自動車の軽衝突を想定した衝突シミュレーションを有限要素法により解析し，今回設計したサイドメンバーモデルの特性評価を行う．