5083アルミニウム合金の摩擦撹拌接合過程における入熱の実験的測定

摘要

溶接において「被接合材への入熱」は継手品質の管理上、極めて重要な因子と言える。アーク溶接では、投入される電気エネルギーが全て熱に変換されると仮定した式りが広く利用されているが、摩擦撹拌接合（FSW）において「被接合材への入熱」を精度よく求める式は確立されていない。FSWの入熱の代わりとして、接合速度をツール回転速度で割った回転ピッチ2）が用いられる場合があるが、低接合速度で高回転速度ほど熱影響が大きくなるという経験則に基づくものであり、「被接合材への入熱」を表すものではない。さらに、ショ／レダ面で発生する摩擦発熱が入熱に比例すると仮定したFrigaardの式3）、主軸回転モータのトルクからFSW時の入熱を求めるモデル4）などが提案されているが、FSW過程での仕事は被接合材への入熱だけでなく、ツールへの入熱や微細結晶粒形成のためのエネルギー等へ分配されるため、「被接合材への入熱」との関連性は不明である。そこで本研究では、FSW過程において被接合材へ投入される熱量（入熱）を、Aotaら5）によって提案されたカロリメトリー法を用いて実測することを試みた。さらに、実測した入熱を接合因子から求める実験式を得た。