低酸素アーク溶接金属のミクロ組織

摘要

鋼のアーク溶接では、アーク放電の安定化のためにシールドガス中に酸化性のガスを混入し溶接する必要があり、その結果、溶接金属中には数百ppmの酸素が含まれ、多数の酸化物系介在物が形成される。溶接金属中の酸化物は、相変態時に変態サイトとして機能し、ミクロ組織の微細化に貢献するが、一方で破壊の起点ともなり、延性·靭性の劣化要因でもある。ミクロ組織の微細化に関しては、10pp血程度の極低酸素含有量の電子ビーム溶接で、微細なアシキュラーフェライト主体の組織が形成され、良好な靭性が得られたとの報告1）があり、アーク溶接でも同様に低酸素含有量で組織微細化が達成できれば、従来以上の機械的特性が得られることが期待できる。著者らは、真空溶解鋼板をTIGリメルトした溶接金属で、極低酸素含有量においても粒内変態によるアシキュラーフェライト（AF）を多く含む組織の形成が可能であることを示した2）。本朝では、シールドガス組成を変化させた低酸素シールドガス雰囲気中でのGMA溶接におけるミクロ組織の形成状況について調べた。