気道管理教育訓練用ヒューマノイドWKA-5Rの開発－症例再現とセンシングが可能な新型舌部の設計·製作

摘要

気道管理は，麻酔等により意識を喪失した患者の状態に合わせて最適な器具と手段を選択，実施することにより，肺に酸素が行き届く状態を獲得·維持するという医療手技である[1]．日本麻酔科学会の調査によると，1999～2003年の間に麻酔管理が原因の危機的偶発症例(心肺停止及び心肺停止寸前の状態)は2263件報告されており，そのうち約1/4が不適切な気道管理によるものと言われている[2]．気道管理手技の訓練が様々な形で行なわれているが，倫理的な問題から，人体に対してではなく，患者を模したマネキンに対して気管挿管訓練を行なうことが主流になりつつある．現在，様々な企業から気道管理訓練用シミュレータが販売されている．しかし，事故現場や医療現場で見られる患者の個人差や状態の変化，不適切な手技によって生じる状態の悪化などを再現できるシミュレータは存在しない．そのためシミュレータに慣れが生じると，それ以降の技術の向上が困難になる．また，行った手技に対する定量的な評価のフィードバックが存在しないため，訓練者が誤った操作を自覚するためには熟練者の指導が必要不可欠である．