京都市「大岩街道周辺地域」にみる違法開発集積地域の改善事業における主体設計に関する研究 その1: 主体形成の読解からみる将来像提案の位置づけ

摘要

近年まちづくりは外部の人間の参加は珍しいことではなくなり、多様な主体の積極的な協力を伴うようになっている。地域によっては特に学生をはじめとした外部プランナーの参画によって、個々人の関心の範囲を超えた都市地域の共有されやすい将来像提案を示す活動も活発化している。そうした外部の人間の既存の枠組みにとらわれない将来像提案によって地域の価値を把握することを通じて、地域状況の改善の雰囲気づくりのきっかけを作り出すとともに、関連法規や政策の更新をもたらすことが考えられる。しかしそうした将来像提案に対しては現実と理想のバランスに関する問題点も提起されており、地域に対する将来像が必ずしも地域改善の現実的な問題点に直接応えるものであるとはいえない。その原因は、本来資金的課題や法制度的課題をはじめとした地域に固有の幅広い要因が絡み合ったものであるが、その状況下で実際にまちづくりにむけた動きを作り出すことを目標にした諸主体間の関係構築や行動の指針を示したときに、将来像提案は生きたといえる。そのためまちづくりの提案に対しては単なるハードの空間設計のみならず、既存の主体関係の形成からの連続性を意識した主体関係の設計までを行うことが求められると考える。