寝室内環境が睡眠の質に与える影響(第5報）基礎代謝量の個人差を考慮した人体熱負荷を用いた睡眠の質の分析

摘要

本研究では、基礎代謝量の個人間差を考慮した睡眠時人体熱負荷と睡眠の質の関係の分析を目的に睡眠実測調査を行い、以下の知見を得た。1) 全対象者の基礎代謝量の平均値は0.7 metであったが、年代性別ごとに基礎代謝量を比較すると男性女性ともに中年より青年において高く、また青年中年ともに女性より男性において高かった。2) 睡眠時人体熱負荷の分布は、基礎代謝量の個人間差を考慮せず一律とした場合と比較し、個人の基礎代謝量の実測値を用いた場合において中立に近づく傾向があった。3) 個人間の基礎代謝量の違いを考慮することで、より適切に睡眠時の温熱環境を評価できる可能性が示された。5) 人体熱負荷が概ね中立付近であるほど、中途覚醒発生率が低い傾向がみられた。一方、寒い環境においては、中途覚醒発生率の上昇が確認された。6) 環境の変移を考慮した人体熱負荷(ΣL_m)が0kJ/m~2付近であるほど中途覚醒が減少し、深睡眠割合が増加する傾向がみられた。また、ΣL_mの正値および負値のいずれが高い場合においても睡眠の質が低下した。睡眠時において、ΣL_mの正値および負値の合計が0kJ/m~2に近いほど睡眠の質が向上する可能性が示唆された。