神戸層群における長大切土法面の強度低下と残留強度の評価について（その２：鉱物・化学的特性の評価）

摘要

分析の結果，調査地の地層の脆弱部を構成している主要鉱物は，スメクタイトであることが判明した．当地区のすべり面はCa 型スメクタイトを多く含み，Na 型も含有する中間型スメクタイトであった．Ca/Na 比は遅れ破壊を起こしやすい法面であることを示唆し，これまでの変状履歴を裏付ける結果となっている．切土法面の不安定化機構として，大規模な掘削による応力解放でリバウンドが生じ，ゆるhで透水性が高くなった割れ目などから浸透した地下水によってスメクタイトを含む岩石が膨潤した可能性がある．膨潤でゆるhだ地山の変形が徐々に進行するとともに，すべり面においても変形に伴う強度低下（ひずみ軟化）により，数年を経てすべり破壊が顕在化したものと考えられる．先行研究より，スメクタイト含有率が20％を超えるような土質材料は，残留せh断抵抗角が10°以下に低下することが判明している（図-3）．当斜面でもすべり面付近におけるスメクタイト含有率は20％を超えるような状況にあり，長期的な強度低下のリスクを抱えた斜面といえる．長大法面の切土計画に当たっては地質調査段階でスメクタイトの含有状況の調査なども必要と判断される．