富士山麓森林におけるオゾンフラックスの季節変化とその要因の解明

摘要

温室効果気体や微量気体の沈着・放出過程は対流圏化学と放射強制力の変動を通して大気環境に影響を及ぼす（Ollinger et al., 2002）．大陸で発生した大気汚染物質は化学反応を起こしながら日本まで到達し，日本における対流圏O_3 の濃度レベルを引き上げながら，日本の森林に沈着・吸収されている．近年国内の森林は，これら大陸からのO_3 によって悪影響を受け成長が阻害されていることが報告された（Kitao et al., ScientificReports, 2016）．森林生態系にてO_3 フラックスの季節変化を定量的に明らかにし，その変動要因の解明を行うことは，地球規模でのO_3 のsink と source 強度 の把握と，国内での大気環境と森林環境の保全に必要である．しかしながらO_3 の森林生態系における濃度は二酸化炭素（CO_2）の濃度に比べて10 万～1 万分の1程度と小さく，物質の微量な濃度変化を測定する必要のあるフラックスの計測は難しかった．本研究では物質の濃度勾配より輸送量を計測する傾度法を用いて2016 年～2018 年にかけて森林にてO_3 フラックスの計測を行い，数値シミュレーションの結果と比較することで，O_3 フラックスの季節変化の要因を考察した．