後流積分法を用いた翼周りの各種流れ場における空力係数推定

摘要

航空機の開発や性能向上において，飛行機体の空力係数を精度良く求めることは実験計測においてもCFDシミュレーション計算においても重要な課題である．特に抵抗値は揚力値に比べ絶対値が小さく,実験では風洞環境や計測機器の影響，CFD計算では機体表面形状，格子分布，計算精度などに起因する誤差の影響を受け易く，その算出法に対しての基盤的研究が継続的に行われている．一般的に，抵抗は実験では風洞天秤での力測定，計算では計算結果から抽出した機体表面にかかる力を座標軸方向の成分に分解して積分する手法で求められている．これらは対象となる機体にかかる力から抵抗を得る方法であり，近接場（Near-Field）法と呼ばれている．一方，機体そのものではなく，飛行機体が通り過ぎる際の流体場へ残した痕跡から，空力的力を求める手法も考案されており，遠方場（Far-Field）法とか後流積分（Wake-Integration）法と呼ばれている．これらの手法の始まりは，２０世紀前半に，Betzらにより発案された実験における後流面ピトートラバースを用いた抵抗計算であると思われるが，近年はONERA（仏航空宇宙研究所）で，風洞実験応用・CFD応用の両面での活発な研究がおこなわれている．ラムベクトルを用いる手法もある．また，Far-field法からの派生的手法として，CFDシミュレーションによる数値誤差の影響解析に強い手法に，Mid-field法がある．