ケモメトリクス手法を用いた下水由来毒性物質群の探索

摘要

都市下水は，身近に存在し，天候に左右されない水 資源として世界各地で活用が進められているが，下水中 の農薬や医薬品等の微量汚染物質の中には，高度処理によっても除去困難なものがあるほか，処理過程で多様 な副産物が生じ，これら下水由来の未規制化学物質による人体及び生態系への影響は，水の循環利用における 潜在的な懸案事項となっている。一方，近年，複雑な組成を持つ環境水や下水試料に対し，3次元励起蛍光分 析ゃオービット質量分析を用いて網羅的な特性解析を行 う手法が確立されてきた。我々は，多数の下水試料に 対し，蛍光特性や質量分布等の網羅的な分析を実施するとともに，ヒト細胞に対する毒性影響を評価し，これら多次元データに対してスパースモデリング理論を取り込hだ 回帰分析手法を用いて，細胞毒性の起因する水質パラメータを明らかにすることを目指している。本報では，令和 元年度までに集積した208件のデータセットを解析レ，細胞毒性と一般的な水質指標との関連性を調べた結果に ついて報告する。