タグチメソッドを用いた適応宇宙構造物の異常診断

摘要

近年，宇宙システム開発において，高度な異常診断技術は必要不可欠である.様々な診断データを人間が判断することは宇宙機のような複雑なシステムでは限界があり，自律的な異常診断システムが必要とされる.そのような方法のひとつがタグチメソッドである.タグチメソッドは本来品質工学と呼ばれ，異常診断にこの考え方を適用したものがMTシステム(マハラノビス•タグチ法）である.医療，宇宙，自動車，経営などの幅広い分野で利用されている.本研究ではタグチメソッドを用いた異常診断法に着目し，センサーやアクチュエータを内蔵し，形状の精密制御や振動制御などの高度の機能を持つ適応宇宙構造物に適用することを目的とする.筆者らは，これまでに，スマートはりをモデルとして数値シミュレーションを行い，モデルベースの異常診断法とタグチメソッドを用いた異常診断と比較し，その結果MTシステムを用い異常診断をすることができることを示した.さらに、圧電素子を貼付したスマートはりの振動実験を行い，振動応答データから構造内に発生する異常を検出する自己診断問題に適用し，MTシステムの異常診断を行えることを示した.本報告では，スマートはりの実験室モデルを用いて，構造の異常を検出する自己診断問題に適用し，MTシステムの有効性を実験により検証する.