建築プロジェクトにおける鉄骨生産の合理化に関する研究その２ 鉄骨ファブリケータの設計変更に関わる業務

摘要

鉄骨工事で設計変更が発生した場合、その影響は鉄骨部材の製作変更のみでなく、プロジェクトの工期遅延や工事費の上昇などに及ぶこともある。さらに設計変更は鉄骨製品の品質にも大きな影響を与えるため、鉄骨ファブリケータ(以下、鉄骨ファブ)は、多様な設計変更の要求に対して自社の生産体制に柔軟性を持たせ、対応可能とする生産方法や生産体制を検討し、開発・維持する必要がある。しかし、実際の設計変更に関わる業務では、プロジェクトごとに生産環境や組織などが異なり、その結果として情報伝達や意思決定の方法・タイミングが多様になるという問題がある。その理由は、設計変更が建築プロジェクトに関わる発注者・設計者・施工者・鉄骨ファブの業務の中で発生するものであるため、設計変更の対応も必ずそれらの業務との関係を考慮して検討しなければならないからである。つまり設計変更は発注者・設計者・施工者のいずれかから発生し、鉄骨ファブに伝達・指示が与えられる。一方で、鉄骨ファブは設計変更に関連する全ての情報と共に各々の設計変更要求の根本的な要因を正確に理解し、的確に対応しなければならないのである。しかし、現実には、プロジェクト関与者の立場が異なるため、相互の情報交流・連携や協力は必ずしも十分な状態であるとはいえない。