1940 年代植民地下京仁地域における都市防空と緑地計画について

摘要

1940 年代の防空都市計画は、都市の疎開に第一目的があったと考えられ、植民地下の大都市においても同様であった。緑地概念は、公園概念の議論から始まり京城府においては1940 年と1941 年に公園と風致地区が次々と決定された。そして、市街地計画上の緑地（地域）の意味が整い一般に知られるようになったのは解放直前である。都心部の大規模な緑地確保が容易でない京城府においては風致地区指定の措置をとり、工業団地として市街地計画の着手段階にあった京仁など郊外部においては緑地地域制度を適用することで、要求される防空計画上の空地確保を実現しようとしていたと考えられる。1944 年1 月に発表された市街地計画決定案には京仁地域一部の市街地計画対象地（素砂地区、富平地区）に緑地地域が指定されていた。素砂地区においては、土地区画整理地区約450 万坪に匹敵する約400 万坪の緑地地域が指定され、その他に風致地区（約233 万坪）と公園（11 箇所）が決定された。同日に京仁市街地計画から外れ仁川市街地計画区域に編入された富平地区においては、緑地地域約782万坪のほか、風致地区約291 万坪、広場31 箇所、公園13箇所が決定された。1940 年代の京仁市街地計画において、1930 年代後半より目指していた京城府と仁川府を結ぶ産業都市化の拡張は、戦時下における工業地域の分散配置論の具体化に繋がったと考えられる。その一方で、防空計画に一貫した積極的な緑地計画による都市機能の分散は、初期目標であった衛星都市計画から始まる地方計画の試みに巧く回帰できたともいえよう。