改修・転用による展示空間における空間形状とその展示作品に関する研究その２: 作品配置と空間特性との関係に着目して

摘要

本研究では、改修・転用による展示空間について新設による展示空間との比較から、美術作品が空間に応じてどのように配置され、展開しているのかを把握した。現在の展示空間の一般とされるホワイトキューブは作家が自由に表現することを邪魔しないよう、出来るだけ情報が削ぎ取られ、均質さと柔軟さを重要視している。しかしそこでは、作品は整列に置かれる傾向にあり、暗黙のルールが与えられているとも言えよう。作品は既存改修型空間においての方が、既存の柱や建具部材をきっかけに一点に集中したり、大きく広がってみたりと、より自由に3次元にまで展開されていた。こうした美術作品の展開から分かるように、現代の作家は表現することに対して枯渇することのない意欲を持っており、その表れとして美術作品は空間と不可分な関係で３次元にまで展開されている。現代作家にとって展示空間は表現の場であり、より強固な表現を求めて空間へと設置される。