旧横浜生糸検査所附属倉庫の保存再生 その3 化粧煉瓦の概要とその取り外し手法

摘要

歴史的建造物を保存活用するときには、オーセンティシティ(Authenticity·歴史的建造物の真正な価値)を守る必要がある。オーセンティシティの定義の中には、「形態と意匠」「用途と機能」「立地と環境」などと共に、「材料と材質」がある。今回のようにやむを得ず取り壊さざるを得ない歴史的建造物から、仕上げ材を取り外し保存し、新築建物に再利用することで、オーセンティシティを守りたいという要望は多い。しかしながら現実には、何十年も落下することなく取り付いていた仕上げ材を取り外すことが、施工上非常に困難である。他事例(タイル張りRC造)での実績では、約1割程度であった。本報告では、既存煉瓦の付着強度を確認し、施工状況を把握することで、煉瓦という厚みのある素材をパネル化して取り外すことができた。さらに治具の開発により、パネルの保存率は格段に高まり、現在(2008.4)取り外し施工中である。