スケールを主題とした設計論の文脈と参照対象 現代日本の建築家の設計論にみられるスケールに関する研究(1)

摘要

建築固有の概念として、空間、形態、構成などをあげることができるが、例えば身体と調和する空間秩序も、形態のもつモニュメンタリティも、それらを実体化するためには寸法および比例という意味を担ったスケールという概念が不可欠である。このスケールという概念は、実体化のための手段としてだけでなく、巨大な建築が社会の中で権威性を表現し、理想とする比例関係がそれぞれの時代の美をつくりだすなど、建築を取り巻く社会的な制度および空間的規範と密接な関わりをもつことから、建築家の多岐にわたる設計思想を支えるものとして重要であると考える。そこでこの研究では、スケールをサイズとプロポーシヨンからなるものと定義し、現代日本の建築家のスケールを主題とした設計論の文脈とその建築的思考の形式を検討することから、建築家のスケールに関する思考の枠組みを明らかにすることを目的とする。