建築の傾斜部位に起因する日常災害の種類とその安全対策

摘要

建築空間には構造上、バリアフリー化上、その他の理由から、あるいは純粋にデザイン上の理由から、斜めの部位がつくられることがある。だが、それが人間の行動法則・行動心理・視覚法則などに反していると、ぶっかりやつまずきなどの日常災害の発生要因となりうる。事後対策ではデザィン上の対応に限界があることは、多くの事例が示しているが、日常災害の特性を十分に理解し、発生を予測することで、デザイン性を損なわない事前対策を講じることができる。だが、付近に注意をそらすものがあったり、壁・設置物・人等により対策箇所が死角になったりすることがあるので、単にその部位だけに安全対策を講じても、必ずしも安全は担保されない。安全性とデザィン性は決して対立する概念ではない。両者の統合をはかれるか否かが、設計者の真価が問われるポイントの一つであると考える。