京染町家の増改築過程とその背景からみた類型 産業の近代化と京染町家の建築的特徴(1)

摘要

京都市中京区?下京区は、伝統的に京染産業が盛hな地 域であり、同一地域内の町家内部で着物の製造を完結する 仕組みが確立されてきた。町家の特徴としては、細長い敷 地に建設された木造軸組構法の長屋が街区単位で密集し ていることが挙げられる。その中で、京染の仕事場を持つ 町家( 以下、京染町家) は、周辺建築の高層化が進む高密 度な都市環境の中に立地し、かつ、機械化をはじめとした 京染産業の近代化が進hでいるにも関わらず、伝統的な建 築形式を現代まで維持している。その理由の可能性として は、増改築が容易である木造建築の性格を活かすことで、 都市化と産業の近代化に対応できたということが考えら れる。そして、増改築過程で京染職人と施工者の経験的 な知恵による工夫を積み重ねてつくられた京染町家には、 実用的な建築としての価値が現れていると考えられる。そ こで、本編では、増改築過程とその背景を時間軸に沿って 捉え、増改築理由と方法により京染町家の類型の一端を見 い出すことを目的とする。