中国東北部の農村における漢民族住居の主屋入口と敷地門の配置

摘要

本稿は、敷地と住居の関係性の分析から中国東北部の農村部における漢族の住まいの空間秩序を明らかにするものである。中国文化の根源に関わる漢族の居住様式の多様性と普遍性を明らかにすることを目的とした研究の一部である。中国における住居の民族性を視野に入れた研究としては、江南地方の少数民族住居の「漢化論」を取り上げた浅川滋男の研究、中国羌族の住居の「空間のヒエラルキー」を取り上げた井上えり子の研究、このほかにも多数の研究事例がある。溝口も徽州や湘南地域の民家について分析を行った。しかし江南、華南地方の多民族地域についての研究に偏りがちで、中国東北部における同化された漢民族のアイデンティティーを住居の観点から再定義するという論は殆どみられない。