モデルベース設計におけるモデルの冗長性について

摘要

ドイツが提唱するIndustrie 4.0に代表されるように，世界の製造産業は新たなステージに向け競争力を加速しているように思われる．とりわけ人口の高齢化，減少化といった社会構造の変化に直面する我が国においては，労働力人口の不足を補う意味においても，今後の社会構造に耐えうる製造産業の在り方が問われることとなるであろう．次代の製造産業の隆盛を決める要因として，AI とロボット技術があげられる．もとよりこの 2 つは，人の“頭脳”と人の“手”をモデル化した代替物にすぎない．他方従来の製造産業の実空間上の事象をサイバー空間に投影し，高レベルでの価値の発見，産出を狙った，Model-based systems engineering (MBSE)やCyber-Physical Production Systems (CPPS)といった戦略を掲げる主張もある．これらの実現には製造物の設計，製造，販売，メンテナンスに渡る製品のライフサイクル全体に対してのモデル化が前提となる．以上の観点からすれば，今後事象のモデル化という行為の重要性は今以上に高まり，自然科学，人間科学，社会科学等の広範な分野の知識と信頼度の高いモデルの構築手法が希求されるものと思われる．