自閉症者の手描き地図からみた空間把握と生活領域　その2 自閉症者と定型発達者の比較

摘要

自閉症者と定型発達者のイメージマップの比較から指摘可能な差異は以下のようにまとめられる。①高密な描写の表現と簡素な描写の表現。②多くの要素による線形的な表現と少ない要素による面的な表現。③具体的な表現と概念的な表現。①定型発達者は、いくつもの対象を一つのまとまりとして認知することで、一貫した意味ある全体を創り出そうとする能力が働く。自閉症者は、そのような全体に一貫した意味を見出すことが苦手＊ 5 とされることから、細かな部分から対象を記憶し、識別することで空間把握を行うと考えられる。②自閉症者は多くの要素をルート沿いに形成・記憶し、これらを数珠状につなげることで線的な空間把握を行うのに対して、定型発達者は少ない要素で広範囲の生活領域を形成する面的な空間把握を行うと考えられる。③定型発達者は、要素を文字や四角の枠などで簡略化し、概念的な空間把握を行う。自閉症者は、概念を形成したり抽象的な思考を理解したりすることが苦手であると考えられており、見たものをそのままの実体（立面図状）として記憶するような具体的な空間把握を行う傾向があった。