樋井川の記憶:樹木構造による船着場

摘要

サグラダ・ファミリアやシュトゥットガルト空港などの有機的で伸びやかな空間を演出するための主要素となるのが樹木構造である．樹木構造で大屋根を支える場合，屋根に近づくほど細い沢山の枝で支えることができるため，薄くて軽い屋根を少ない柱で構成することができる．しかし，このようなメリットや魅力がある一方で，デザインプロセスにおいてデザイナーの自由な造形と力学的な合理性の確保を両立することは難しい．そこで本稿では，重力により曲げモーメントが発生しない樹木構造の造形の試行錯誤が可能な逆さ吊り模型を，写真測量，有限要素解析の技術を併用し，意匠と構造が一体となった設計手法1)の実践例を紹介する．