18 世紀英国の廃墟崇拝の背景に関する分析 :修道院解散とピューリタン革命を中心に

摘要

18 世紀に廃墟崇拝が英国で育まれた土壌としては、16世紀のヘンリー8 世による修道院解散と、17 世紀のピューリタン革命により、多くの修道院や城が廃墟となったことがあげられる。17 世紀には中世への回顧がみられ、古事物愛好家によって廃墟への関心が高まり、遺構の調査が進められた。18 世紀には廃墟への関心は古事物愛好家だけなく、多くの人々のあいだに広まり、英国独自の風景式庭園が造園されるなかで、廃墟を庭園にとりこむことが流行した。その際、グランド・ツアーによりもたらされたイタリアの風景画、特に廃墟画が英国芸術に大きな影響を与えた。すなわち、これらの風景画に描かれた風景を風景式庭園に移す試みがなされ、廃墟が風景式庭園にくみこまれていった。 18 世紀の廃墟崇拝という大きな潮流は、理論家の思想にも裏付けられ確立された。ここでは英国に廃墟が多く生み出された大きな要因として、ヘンリー8 世による修道院解散と、オリヴァー・クロムウェルによるピューリタン革命をみたあと、ウィリアム・ギルピンによる理論を分析する。