吉村順三の記述における「環境」についての基礎的考察

摘要

建築家・吉村順三（1908－1997）は，近代を代表する建築家の一人である。彼は，住宅を中心に多くの建築を設計したと同時に，建築や都市，環境について少なからず発言を遺している。特に「環境」については，多用な発言を遺している。しかし，その意味は曖昧である。本稿では，「環境」について多用の発言している建築家・吉村順三に注目し，彼の「環境」について，記述をもとに，その意味を明確にしていきたい。よって，本研究の主題は，建築家・吉村順三の記述における「環境」の言説について考察することである。本研究の目的は，建築家・吉村順三の記述にみる「環境」という言説に注目し，彼のいう「環境」がどのような意味と広がりをもって使われていたのか，前後の文脈から分析・考察し，その意味の一端を明らかにすることである。本研究の対象資料は，彼の残した著述は少ないが，彼の思想や対談が記載されている資料から，「環境」に関する言説のみられるものを一次資料とした。進め方としては，吉村順三に関する資料の収集を行い，対象資料から「環境」の言説を抽出し，その前後の文脈から，彼の捉える「環境」の意味や特徴を明らかにする。吉村に関する既存研究の多くは，建築作品からみる作品研究や設計手法に関連する計画系研究であり，本研究である，彼の捉える｢環境｣に着目した研究は見当たらない。