第二次大戦前後の沖縄・伊江島における軍事利用が与えた集落構成への影響の研究

摘要

沖縄本島の北西約9km にある人口約五千人注1) の有人島である伊江島は、太平洋戦争のなかで日本軍によって全島空母化が図られ、その後も戦火による全住戸の焼失、米軍による全島民強制移送とその間の戦場整理、基地化や軍用地接収といった外力を度々受けながら復興を果たしてきた。このような戦後史を辿った集落は極めて特殊であるにも関わらず、当時を記す資料は分散しており、都市的な考察がなされた既往研究は存在しない。本論文では、大戦前後を中心とした収集可能な地図資料( 表1)と、42 名の話者から抽出した171 の集落に関する証言記録注2)、村史等の歴史文献を対象とし注3)、これらを統合的に参照していくことで伊江村集落史の体系化を図ることを目指す。その上で、上述した一連の外的要因が集落形態に与えた影響と、残存する当時の痕跡が現在において果たす機能の一端を明らかにすることを目的とする。