タジキスタン農業の再編と農民組織の役割

摘要

中央アジアに位置するタジキスタンは，中国， キルギス，アフガニスタン，ゥズべキスタンに囲まれ，国土面積の約43%はパミール高原が占め， 約93%が標高300m以上の山岳国家である（図一 1).主要な産業は農業と水力発電，アルミ生産 であるが，全人口737万人のうち約74%は農村地 域に住hでおり（註1)，農業生産がタジキスタ ンのGDPの約20%シェアを占め，農業分野で働く 人口は約67%に達する（註2).1991年のソ連崩壊に伴つて独立したが，翌年か ら内戦が勃発し1994年に停戦に到った.石油-天 然ガスなどの自然資源に恵まれないタジキスタン は，この内戦によって他の中央アジアCIS諸国（註 3)との経済格差が更に拡大し，社会インフラの 整備が大幅に遅れた.農業分野では，生産基盤の 老朽化や綿花栽培での負債問題，農家の資金不足など多くの問題を抱え（註4)，その解決のため 2009年から「農業改革」が推し進められている（註 5).こうしたなか，集団農場の民営化に伴って 農民の組織化が進みつつあり，日本の農協制度の 教訓が活かされる可能性もある.