地域公共財の供給メカニズム 一カトマンズ盆地サリナデイ潅漑システムのケー一ススタディー

摘要

南アジアにおいて食料を増産するには水資源を効率的に利用する乙とがきわめて重要である。特に，水資源の既存量に加え利用効率が乾季の耕作可能農地面積を左右する。 これまで，われわれはネパ.ールの水利用が必ずしも効率的に行われていないことをカトマンズ盆地のサク村を中心とするサリナデイ自然流下式潅漑システ一ムの事例調査によって明らかにしてきた注1）。 サリナ.デイ潅漑システムの受益者は水利組織を形成しない。 そのため，潅漑施設の維持管理注2）に問題が発生し，水資源が効率的に利用されて－いるとは決していいがたい。 水利雑織の末形成は，潅漑システムの維持管理雑織の欠如を意味しており，水利施設の劣化とともに農業生産は著しい停滞を余儀なくされる。 上流優位の水利用を招くと同時に，下流.では，上流に比べて約1ケ月田植えが遅れ，水不足に直面するため乾季の作物選択の幅を大幅に狭める。 システムの下流に固場をもつ農民は，馬鈴薯よりもはるかに収益性の低い小麦の作付けを余儀なくされる。